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蛙の祈り

ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌは55年のあいだ、世に知られずに暮らした。その間、多数の傑作を生み出したが、いずれも善良な近隣の人たちにただで与えていた。彼はひたすら絵を描くことに心血を注ぎ、名声を博そうなどこれっぽちも考えなかった。いつか近代絵画の父と仰がれる日がくるだろうなど夢想だにしなかった。

彼が広くパリに名を知られるようになったのは、ある画商がはからずも彼の数点の絵を目にしたことによる。この画商の手によって開かれた第1回セザンヌ展が彼の力量を世に問う機会となった。世界は埋もれた大家のいることに大いに驚いた。

大家セザンヌのほうも驚いた。息子の手にすがって展覧会場に着いた彼は、展示されている自分の作品を見て、驚きを抑えられずに息子に向かってこう言った。

「ごらんよ、私の絵が額縁に入っているよ。」


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