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ギリシャ神話

日時計

ギリシャ神話  神々と英雄たち
バーナード・エブスリン  著
三浦朱門  訳
現代教養文庫

ギリシャ神話の神々や英雄は哲学や心理学、天文学など科学用語として、あるいは日常語の中に、生き続けています。
そしてギリシャ人の発想は、のちに発生したあらゆる宗教に影響を及ぼします。
私たちは、物語を読むことによって崇高な宗教上の命題をいつのまにか、心深くにまで入り込ませることになるのかもしれません。
ここでも1つ物語をご紹介したいと思います。

ピュグマリオンとガラテア

キュプロスの若く才能溢れる彫刻家ピュグマリオンは、未婚の男性でした。
彼は、腹がへれば食い、疲れると眠り、その気になった時に働き、何日も人に会わないこともありました。
幸福な毎日を送っていた彼は、周囲の女性たちをひどく苛立たせてしまうのでした。
幸せな独身男など、存在させておけない、というわけです。
彼女らは彼を自分たちの娘の一人と結婚させようと美の女神アフロディテに祈りました。

その夜、アフロディテはピュグマリオンの夢に現れて、言われます。
「お前を結婚させてくれと、女どもに頼まれている。お前はどういう好みなのか」
ピュグマリオンは芸術家でしたから、夢の持つ恐ろしい現実性を知っていました。つまり問題は深刻で、自分はおびやかされていることをよくわきまえていました。
「そういう憧れの女性はおりますが、未婚ではありません」
「だれだ」
「あなたです。日常の生活の中で、理想の美の形のみを追求している私は、あなたのみを愛します。 それと同じ完全さをもつ娘に会うまでは、私は恋をしません。」
アフロディテは女神でありながら女でもありましたので、彼の熱烈な賛美を非常に喜びます。

彼は女神の像を彫るまで結婚を延期してもらうことをゆるされます。
彼は毎日夢中で像を彫りました。
何日も食べず、頭は火のように熱く、手は自由に動きました。
そして、ある瞬間、それが完成したのを自覚しました。
それは闇の中に輝き、今にも動き出しそうに見えました。
彼は、どこか未完成なところはないかと調べました。
どこにもありませんでした。それは完全な傑作でした。
それはピュグマリオンが人間にはかつて示さなかった愛によって作られていました。
ガラテア、と彼はその像を名付けました。

彼はそこに座って、ずっと彼女を眺めていました。
そこに女神が現れて言われます。
「お前は像を完成させた。結婚せねばならない」
「だれと」
「だれとでもよい、お前は自分の花嫁を選びたくないのか」
「選びとうございます」
「では、選べ。どの娘でも選ぶがよい。だれであろうと、どんな身分であろうと、その彼女はお前を愛する。なぜなら、私はお前が作った像を気に入ったからだ」
「私が選ぶのは・・・これです」とピュグマリオンは像を差しました。
「それはできない。この女は大理石像だ。お前は生きている女を選ばねばならぬ。」
「私は愛するものを選びます。だれでも、どんな身分でも、とおっしゃいました。」
「その通り。しかし彫刻のことは考えなかった」
「私は考えます。これを作るのに私はこの血をこの中に注ぎました。この像は私の力、私の弱みを知っています。私たちは結婚しています。しかし決定的に不完全な形で。お願いです。彼女を私にください」
「できない」
「あなたは女神です。不可能なことはありません」
「私は愛の女神だ。命なくして愛はない」

ピュグマリオンは尚、アフロディテに食い下がりました。

「しかし愛のない命もありません。あなたがおできになるのはわかっているのです。さあ、私をいま大理石にしてください。彼女なしでは私は息をすることも、見ることも、存在することも願いません」

アフロディテはピュグマリオンの強い訴えを聞くうちに、自分の身分を忘れ、彼に心の温まる思いを感じます。
結局彼は女神に似せて彫刻を作ったからでした。
「お前は正気ではない。まったく狂っている。よろしい若者よ、彼女を抱くがよい」

彼は生きている娘を抱いているのでした。

2人はひざまずいて恵みに感謝しました。
「立て、美しい2人よ。私の神殿へ行き、花輪で飾れ。私の恵みの感謝の言葉を大声でとなえよ。 キュプロスの母親どもは、当分の間、私への賛歌にあまり熱心にならないであろうから」

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