トップ お薦めの映画 お薦めの本 名作アニメ お問い合わせ ブログ

ギリシャ神話

エロスとプシュケ

あるところの王様に三人の娘がいました。 中でも末娘プシュケの美しさは、美の女神アフロディテにも引けをとらぬほどでした。 アフロディテは嫉妬を覚え、恋の矢を射る息子エロスに、プシュケに何かくだらないものに恋させるよう命 じます。 エロスは母の言い付けに従い、眠るプシュケの側に舞い下りますが、その美しさにエロスは意地悪をするの をためらってしまいます。 そうしてプシュケがふと目を覚ましたとき、慌てて飛び去ろうとしたエロスは過って恋の矢で自分自身を傷 つけてしまいます。 突如、彼女は彼にとってこの上なくすばらしく、尊いものになりました。そして自分の力の及ぶ限り、彼女 を損なうことはできない気持になりました。 やがてプシュケの身の上に、恐ろしい神託がくだります。 「プシュケは人間の妻になることはない。夫となるのは、山上に住み、人と神とに打ち勝つものである」 王様は神託に従い、泣く泣くプシュケを山に置き去りにしました。 すると西風ゼピュロスがプシュケを優しく抱き上げて、山の上の銀色に輝く城へと運んでいきました。 夜になり、夫を待っていると、彼女の目には何も見えなかったのですが、夫が話しかけてきます。 その言葉はやさしく、聞いていて、彼女は自分で考えているように自然でした。 翌朝、目を覚ました時、彼女は一人きりでしたが、しあわせでしたのでそんなことは気になりませんでした。 くる日もくる日も、毎晩毎晩同じでした。 そして、世界で自分だけがこういうよろこびにめぐまれたのはなぜだろうと思いました。 夜ごと夫は彼女にたずねます。 「お前、しあわせか。何かほしいものはないか」 「別に、でもあなたがほしい」 「お前のものになっているじゃないか」 「でも見たいの」 「今にな。しかし、今はまだだめだ。その時が来ない」 「あなたがおっしゃることなら、それでいいけれど、でもなぜ、夜にしかきていただけないの?」 「それも今に変わるだろう。しかし、それもまだだ。まだ早すぎる」 プシュケは一時は気が休まりましたが、幸福感のために前より美しくなり、花のような彼女を妬む姉たちに、 「お前の夫は恐ろしい怪物よ。醜いのに限って逃げ隠れするものよ。いつかお前を食べてしまうつもりなの よ。」と言われ、その言葉が心に突き刺さりました。 姉たちがいなくなり、プシュケは一人ぼっちでおびえ、ひどく不安でした。 彼女は姉たちの言ったことを考えて、疑いのために熱まで出てきました。 夫が正しいことは分かっていました。美しいことも確かでした。 しかしなぜ姿をみせないのでしょうか。昼の間、何をしているのでしょうか。 姉たちのほかの言葉が思い出されました。 「彼はここにいない間、国中に1ダースも城を持っていて、それぞれにお姫様をかこっているかもしれないわ よ。それを全部まわってくるのじゃないかしら」 そして嫉妬は、恐怖よりはげしく彼女を心をさいなんでいきました。 夫が怪物であることを本気で心配しているのではありませんでした。 食べられてしまうこともこわくはありませんでした。 しかしほかに妻がいる、他に城をもっていると考えると、体を引き裂かれ、気も狂わんばかりでした。 夫を見ることができれば、疑いはとけるような気がしてきました。 そして、ついに夫との約束を破り、ベッドで眠るその姿をランプでかざしました。 そこにはエロス、神々の中で、一番若く美しい神がいました。その美しさに彼女は胸は躍りました。 ところが熱い油が彼のむき出しの肩に落ちたため、エロスは驚いて目を覚まし、火を吹き消します。 彼女は取りすがろうとしましたが、突き放されます。 「お前はまだ愛を受けるにふさわしくない。私は愛そのもので、信じられない者には、私は存在しない。 さらばだ、プシュケ。」 彼女は中庭に走り出て、彼の名を呼びました。振り返ると城はなくなり、中庭も消えました。 彼女のものだったあれこれが、すべて愛とともに消えてしまいました。


ボタン

ページトップへ

Copyright©Sena's Room
inserted by FC2 system